自然豊かな地で 農村暮らしを満喫
清らかな川が流れ、心地良い風が木々を揺らす佐賀市三瀬村。福岡市からも佐賀市の中心部からも1時間でたどり着ける農村に、「農家民宿 具座」はあります。
屋号の「具座」は、辺り6軒ほどの小さな集落の名前。そこで藤瀬吉徳さん・みどりさんご夫妻が、真心を込めて、訪れる人たちを迎えています。
1人でも、家族や友人と一緒でも、穏やかな時が流れる中でさまざまな体験ができると好評。数年おきに宿泊に来るリピーターも多いのだそうです。
一度きりの人生を 家族と共に
開業前、吉徳さんが役場を退職して農家となり、みどりさんは実家の食堂を受け継いでいました。
それぞれが別々の仕事に励んでいた中で、福岡県西方沖地震が発生。「あの地震が家族について考えるきっかけになりました。地震後に家族でジャガイモを植えた時、本当に楽しかったのもあって、夫と2人で一緒に働こうと思ったんです」とみどりさんは当時を振り返ります。
初めは農業を共に、とも考えたそう。しかし当時はグリーンツーリズムに注目が集まっており、「せっかくならワクワクすることをしよう」と農家民宿の営業を決意されました。
こうして、平成18年2月の終わりに「農家民宿 具座」をオープン。元々農家民宿に大きな関心を持っていた吉徳さんの夢を、夫婦で叶えていこうと歩み始めました。
農村らしさを生かし ゆったり迎える
開業から数年は今より多くの人を受け入れ、さらにはランチ営業も実施。1年目から600人もの人が宿泊に訪れ、ランチはそれ以上のお客さんが入っていたそうです。「あの頃は本当に忙しくて。走り回って働いていました」とみどりさん。
その後、より一人一人のお客さんとの時間を大切に過ごせるようにと居室の広さで定員を定めました。15畳のお部屋は大人で最大7人、8畳のお部屋は大人で最大3人。程よいゆとりが生まれ、さらに豊かな農村体験の提供へとつながりました。
間も無く20年目を迎える今は、年間500人ほどが訪れて三瀬村ににぎわいをもたらしています。
食べれば笑顔に ホッと落ち着く手作りの味
今ではランチのみの営業はありませんが、みどりさんお手製の料理は宿泊者のおなかも心も満たしてくれる味。
「メニューは畑の様子やその日の気温などで決めます。今日はこの野菜が採れそう…、暑いからちょっとスパイスの効いたものにして…みたいな感じで。その時々でおいしいもの、食べたくなるものをお出ししたいので、和洋中といった枠にとらわれず、幅広く作るんです」。
愛情たっぷりに育てられた野菜を丁寧に調理されているからこそ、味わいも格別。“口福”とも言える三瀬の恵みを心から感じられます。
三瀬を全身で楽しめる環境を
自然に囲まれているからこそ、季節そのものを堪能したり、村での暮らしを体験したりと、楽しみ方はいろいろ。6月半ばから7月の初めまでは多くのホタルが飛び交い、春から秋には花々が咲き誇ります。冬にはすっかり雪化粧。季節ごとに全く異なる風景が広がります。
民宿前に広がる畑では、トマトにジャガイモ、ダイコンなど数々の野菜が育てられているので、年間を通して収穫体験が可能。夏限定で大粒の甘いブルーベリー狩りも体験できます。
「たとえば植わっているニンジンを見ること自体、最近ではなかなかないと思うんです。
畑に行って観察し、収穫する。それこそがかけがえのない体験になりますよ」とみどりさんは明るい笑顔で話します。
野菜の収穫やブルーベリー狩りは「生活体験」の一つ。その中でも人気なのが薪割りと五右衛門風呂を沸かす体験で、子どもたちが「忘れられない良い思い出になった」と嬉しそうに話すのだそうです。
その他、村の暮らしをさらに楽しめる「特別体験」も用意。味噌やピザを自分の手でつくれます。
看板猫が見守る 農村の発展
農村体験はもちろん、「農家民宿 具座」にはまだまだ注目したいイチオシポイントが満載です。たとえば、看板猫の「チャッピー」。人なつこい猫ちゃんで、具座のアイドルとして愛されています。
他にも、自家製の特別栽培コシヒカリや、そのお米と清涼な湧き水を使ったオリジナルのどぶろく「GUZA」を販売。無添加で、じんわり広がる自然の甘みを味わえます。
また、コロナ禍で集まる機会が激減し、村の皆さんが寂しい思いをしていることを痛感。そこで、レンタルスペースを活用し、出張居酒屋も不定期で開催しています。
「村の人が喜んでくれるのが嬉しいですね。近年は移住者の方も増えてきて、村の人とのつながりがもっと深まれば良いなとも思っています。集まって語らう機会をつくる、架け橋のような存在になりたいです」。
これからも楽しく お客さんをお出迎え
何よりもお客さんとの交流を大切にしている藤瀬さんご夫妻は、訪れたお客さんとたくさんの会話を交わします。時には相談に乗ることも。「程良い距離感と、ゆったりした時間の流れが相談に適しているのかもしれません」とみどりさんはほほえみます。
「具座のおじちゃんとおばちゃん」として親しまれている藤瀬さんご夫妻。今日ものどかな具座で、明るくお客さんをもてなしています。