はじまりは小さな種から
伊万里の中心市街地から車で10分ほどの場所にある木須町。田畑が家々のすぐそばにあり、農の営みが暮らしに自然と息づくのどかな場所です。フェルマ木須は、この地で穀物を中心とした多彩な農産物を育てています。


提供:フェルマ木須
種まきから袋詰めまで一貫して手がけるスタイルで代々生産。農作業、加工、袋詰め、事務作業などの多岐にわたる仕事を、現在17人体制で取り組んでいます。
代表の木須さんは、「『100の仕事をするから百姓だ』とよくいわれますが、それでいくと私たちは、300ほどの仕事をこなしているかもしれません」と笑顔。そのすべての原点である種まきは、ロゴマークにもあしらわれています。

はじまりから思いを込めて。丁寧に目を届かせながら、確かな農作物を届けています。
おいしさ生み出す土づくり
フェルマ木須でつくられる農産物はまさに多種多様です。米は夢しずく、ひのひかり、さがびよりのほか、もち米や長粒米、赤米、黒米、緑米などを生産。米以外にはもち麦、小豆、大豆、黒豆、キビなどもつくられています。




上記4点画像提供:フェルマ木須
それぞれの作物が持つ力を十分に引き出し、最大限においしく育てられるよう土から工夫。米わら・麦わらをすき込み、自家製の米ぬかも活用したこだわりの堆肥を与えます。作物の特性やその年の気候に合わせつつ、葉色の濃さを細やかに観察した上で量や与えるタイミングを判断。一つ一つの作業に熟練の技が光ります。

提供:フェルマ木須
こうして手塩にかけて育てた後は、データで味を検証。例えば米は、粘りや旨味成分の含有量を数値で確認しています。「基準より少し上のおいしさを保つのが目標です」と、数値的な目安も考えながら、日々作物と向き合っています。
変化に富んでいるからこそ 農業は面白い
幼いころから田畑に囲まれて育った木須さん。その暮らしの中には、いつも農業がありました。進学や就職で農業を離れることなく、農業短大や農業法人で勉強。多くの知識を身につけ、21歳で木須町に戻りました。


提供:フェルマ木須
「農業をやめようと思ったことはありません。作物は一度として同じ育ち方をすることはなく、また、食は生きていくのに欠かせないもの。こんなに面白くてやりがいのある仕事はないと思っています」と木須さん。作物、品種、天候など、あらゆる条件を考慮し、試行を重ねながら育てる難しさは、木須さんにとって「面白さ」の一つです。
その好奇心と探究心は、新たな道の開拓にも生かされます。たとえ一般的に「佐賀県の土地柄には合わない」といわれる作物であっても、「なぜ合わないのか」を考えて試してみるそうです。

こうした姿勢は、フェルマ木須の生産や経営にも色濃く表れます。2017年には法人化し、「面白い」と思える未来に向けて、柔軟に進化を遂げてきました。今では業種を超えて建設業が担う農業土木の資格も取り、自社で農業インフラ整備もこなします。

農業DXで規模拡大に対応
元々は6ヘクタールの田畑で農業を続けてきましたが、近年は後継者不足等の理由で耕作できなくなった地域の田畑も引き受け、今では80ヘクタール弱の農地で作物を育てています。



おいしさを追究し、細やかな管理を人の手で続けてきましたが、今や年間約200トンの米を精米し、袋詰めは月1万5千袋にも及ぶ規模にまで拡大。それでもすべてに目を届かせるため、ばらつきの出やすい作物や土壌の質に合わせて施肥できるデジタル技術を導入しました。
ドローンで地力ムラや生育ムラをリアルタイムに把握。情報はクラウドで共有できる優れものです。これにより、限られた人数でも広い圃場の状況を的確に把握し、迅速かつ的確な対応が可能になりました。
加工の際にも色彩選別機、石抜き、金属検知器などの機械で異物を取り除き、高い安全性を確保。こうして最新技術を活用して収量と品質の高さを保つことで、持続可能な農業の実現へとつながっています。

提供:フェルマ木須
流通にのせる細やかな工夫
農作物は他の農家さんと共同で卸すほか、自ら原価を計算し、価格設定をして売り込みにも行くという木須さん。直接そのおいしさや生産までのストーリーを伝え、売り先を広げていくそうです。
さらに、パッケージデザインにもひと工夫。手に取りたくなるおしゃれさや、フェルマ木須の丁寧な仕事が伝わるよう、プロのデザイナーとも協業しています。

提供:フェルマ木須
木須さんは「どんな食感になるか、どんな料理にできるかを購入時に想像できた方が良いと思うんです。そこで、商品名の横には簡単な説明を添えました」と、作物の価値をしっかり買い手へと届ける工夫を随所に施します。
公式オンラインショップも開設し、全国からのニーズにも対応。贈り物にも喜ばれているそうです。
ふくよかな風味を贅沢に味わう
フェルマ木須では、おいしい自慢の農産物を自宅で手軽に食べられるよう、数々の加工品を販売中です。かおり豊かな「きなこ」、噛めば噛むほど甘みが広がる「もち麦」、3日かけて丁寧に仕込んだ「もち麦と米のあわせ麹」など、多数の品が揃います。




上記4点提供:フェルマ木須
中でも人気商品の一つ「もち麦あわせみそ」は、商品そのものに加えて手づくりキットも好評。みそを仕込む袋や日付を書き込むラベルも同封されており、自宅で手軽に本格的なみそづくりができます。

提供:フェルマ木須
5〜10人集まれば、フェルマ木須でレクチャーを受けることも可能。広々とした田畑と大地のかおりに癒されながら、にぎやかに豊かな時間を楽しめます。
明るく安心な未来のために
食を支える農業は、人々の暮らしから切り離すことはできません。
「食に不安がない未来を子どもたちにつなげたいと思っています。もちろん僕1人ではできないので、異業種交流会に参加して見聞を広げたり、法人同士で協業したりして、みんなでこの風景を守っていきたいです」と木須さんは、明るい未来への種まきにも力を注ぎます。
経営理念は「食べておいしい まわりは健やか みんなが豊か」。今ある農地を守り、生かしながら、ずっと先まで豊かな実りを届けます。

提供:フェルマ木須
