これまでのあゆみ
平田花園は唐津市で3代続くカーネーション農家です。菊の栽培から始まり昭和30年代からカーネーションの栽培をスタートさせました。「花のある暮らし」を提案し続けて半世紀以上、現在はカーネーションを年間約70万本栽培し、全国に向けて出荷をしています。
奥深いカーネーションの世界
母の日の象徴ともなっているカーネーション。ピンクや赤を思い浮かべる方も多いと思いますが、その他、白や青、 緑、 橙、 黄 、紫など多くの色の種類があります。「様々な色がありますがどの色を栽培するかは、毎年、トレンドを見越して決めています。今は年間30種類ほどの品種の栽培をしています。」そう話すのは、平田花園の3代目代表、平田憲市郎さん。様々な色を巧みに咲かせられるのは、花農家ならではの技術。平田花園ではその技術を活かし“七色”のカーネーションの栽培もしています。
農業に“理論的”にアプローチ
「わたしたちは、“土の健康診断”を大切にしています。土の状態を数値化し、土に足りていない栄養を必要な量与え、ベストコンディションを整えます。農業は、天候や自然に影響を受けるものではありますが、栽培に必要な情報はデータ化し、理論的に考えられます。そして、それを経営につなげていくことができます。時代の変化とともに、海外産のカーネーションが増え、花の需要も減る中、なんとか花の市場を盛り上げ、魅力を伝えようと尽力してきましたが、新型コロナ感染の拡大がカーネーションの業界にも大きな影響を与えました。」誰にも予測ができなかった、パンデミックによる社会経済への打撃。県内の多くの事業者がその影響を受けましたが、平田花園もその例外ではありませんでした。
コロナ禍を転機に
コロナ禍で結婚式や卒業式、花が贈られるイベントが見送られ、花の需要が激減。個人のお客さんに花を届けたくても、全国に向けての出荷ができないこともあったそうです。そんな状況下で平田さんは、自身の考え方を変えようと決意。「カーネーションに付加価値をつけて価値を高めるだけでは乗り越えられない局面でした。これまでは、自分が愛するカーネーションを使って、自分のやりたいことをやって稼ごうとしてきましたが、それを変えようと思いました。」そして、平田さんは、“カーネーション一筋”というこだわりをやめ、新しい挑戦を始めました。注目したのは“唐辛子”。
唐辛子は、スパイス料理ブームで需要が高まっているものの、国内生産が少ない事がわかりました。また、唐津は海が近く霜が降りにくいため栽培に適しており、唐辛子は秀吉の朝鮮出兵の際に大陸から唐津に持ち込まれたという説もあるそうです(所説あり)。そういった背景や、これまで培った栽培技術を強みとし、1,500坪のハウスで、唐辛子の栽培をスタート。収穫・乾燥・加工(粉砕)・袋詰めまでをすべて平田花園で行うことにしました。「コロナ禍で時代が変わるのを肌で感じました。今後、リモート会議など、必要とされるものは残っていくし、そうでないものは淘汰されると思います。自分なりに時代の先を見る力が必要なのだと思います。」そう語る平田さんの表情に、迷いは一切ありません。平田さんの決断の早さと行動の早さが、いまの平田花園の成長を支えています。
“ピリカラ”で生み出す好循環
平田花園の唐辛子は“一味唐辛子”としてデビュー。唐津くんちの曳山(やま)にちなんで、「赤獅子」、「青獅子」と命名されました。この商品が、地元の人の雇用を生み出し、新たな流通を生み、唐津が唐辛子の産地として注目される好循環が生まれています。