ふなんこぐい
主菜
ふなんこぐいとは?
鹿島市の浜町で300年以上も昔から続く伝統行事「ふな市」。鹿島では二十日正月に「ふなんこぐい」を供える慣わしがあります。「ふなんこぐい」は、生きたままの鮒を昆布で巻き、大根やゴボウなどと一緒に煮詰めた郷土料理です。その昔、宿場町であった浜町には酒蔵が並び、賑わっていました。庄屋や醸造元などが奉公人をねぎらうため、一月二十日を「二十日正月」としてご馳走を振る舞ったそうです。その際に、商売の神様でもある大黒様と海の神様であるえびす様にお供えしていました。お供えする際は鯛が一般的ですが、有明海では鯛が捕れない上に高価なため、鯛に似た鮒を代用していたようです。じっくり煮込むことで骨もホロホロになり、丸ごと味わうことができます。
材料(25匹分)
- フナ 25匹
- イワシ 16匹
- 昆布(水につけて戻しておく) 適量
- かんぴょう(水につけて戻しておく) 適量
- 大根(※今回は聖護院大根を使用) 3個
- カブ 15個
- レンコン 3節
- 人参 5本
- ゴボウ 2本
- こんにゃく 10袋
- スメ(みそ5kgを水20Lでといてこしたもの)
- 黒砂糖 1.2kg
- 水あめ 2パック
- あめがた 2袋
- はちみつ 2kg
作り方
<スメの作り方>
スメとはみそ汁の上澄みをすくった液のことです。沈殿に時間がかかるため、前日から仕込みます。
(1)みそ汁を作るように、水を沸かしてみそをとき、さらしでこして容器に移す。
(2)平坦なところに置いて沈殿するのを待つ。
<ふなんこぐいの作り方>
(1)大根とカブを皮付きのまま厚さ3cm、幅5cm位に大きく切る。
(2)レンコンを皮付きで厚さ3cmの輪切りにする。
(3)昆布を広げ、生きたフナを乗せて頭の方から隙間ができないように巻き、かんぴょうで結ぶ。
(4)フナが焦げないよう、鍋底に大根とカブを敷き詰め、その上にレンコンを並べる。
(5)昆布で巻いたフナを並べ、スメの上澄みを注ぐ。汁が少なくなったらスメを足し、1日目は8時間程煮続ける。
(6)2日目に、黒砂糖と水あめ、あめがた、はちみつを加えて煮る。小麦粉に水を加えて溶いておく。
(7)こんにゃくを半分に切り、さらに斜めに切って鍋に入れる。
(8)人参は皮付きで厚さ3cmの輪切り、ゴボウは長さ6cmに斜め切りにし、鍋に入れて煮る。
(9)3日目は様子を見ながら必要であれば煮る。野菜などが真っ黒に煮詰まれば完成。
教えてくれた方
鹿島市 大町朝子さん
夫の賢治さんと夫婦二人三脚でみかん栽培に励む朝子さん。鹿島生まれの朝子さんも幼少の頃から「ふなんこぐい」を食べて育ったそうです。家庭によって味が変わるため、大町家に嫁いでからは義母のクメさんに教えてもらい、その味を受け継ぎました。手間と時間がかかるため、昔ながらの手法で「ふなんこぐい」を作る家庭は減りましたが、賢治さんの協力も得て伝統の手法を守っています。
大町さんから一言
三日間煮て完成した「ふなんこぐい」を1月20日の朝にお供えし、商売繁盛、無病息災を祈願します。昔は貯金箱や財布、通帳を一緒にあげたりしていました。私たちは家族そろって夕飯にいただきます。保存食なので日持ちするため、「ふなんこぐい」が大好きな夫は朝・昼・晩と1週間ほど食べていますよ。最近の若い人は鮒をあまり食べなくなったので、頼まれて鰯や鯖で作る場合もあります。