からだが喜ぶ家庭料理をお届け

大きなトネリコの木が目印の「四季のごはん紘」は、からだにやさしい野菜を中心とした心温まる料理をいただけるお店。訪れた人は、お店をぐるりと囲む田んぼ、土の匂い、高く広がる空など、あふれんばかりの自然も一緒に楽しめます。

お店は岩石貴宏さんと紘子さんの2人で切り盛り。米や野菜の栽培もされていて、主に貴宏さんが農業を、紘子さんが料理を担当しています。


店名の「紘」は、紘子さんの「紘」と貴宏さんの「ひろ」の音、そして貴宏さんの両親の名前にも「紘」の字や「ひろ」の音があったことに由来しています。貴宏さんは「思わぬつながりに、紘子さんとは出会うべくして出会ったような縁を感じました」とほほえみます。

夢だった「自分の店」を白石町でオープン
熊本県出身の紘子さんは高校時代、おばあちゃんの家に下宿して学業に励んでいました。
「おばあちゃんは畑で採れたものをはじめ、たくさんの季節の野菜を使った食事を出してくれました。冬にはだご汁、ほうれん草のごま和え、きんぴらごぼうなど。同じものが週に何度も出ることは珍しくありませんでしたが、飽きずに食べていました。そうした『飽きずに食べられること』がなんだか好きで、今の原点になっていると感じます」と振り返ります。

以来、おばあちゃんのごはんのような料理を出すレストランや調理方法などを調べるようになり、熊本県内の1軒のお店に出会います。連絡を取り、アルバイトも経験しました。進学で2年間は離れたものの、卒業後にその店で「絶対に自分の店を開きたい」という熱い思いを抱きながら勤務。憧れのオーナーさんと、1年半ほどの濃い時間を過ごしました。
その後、料理修業のため佐賀県へ。住み込みで働きながら「師匠」とともに、九州を回る日々の中で、貴宏さんと出会いました。「結婚が先だったのか、オープンが先だったのかは忘れてしまいました」と明るく笑うご夫妻は、貴宏さんの住まいを改装し、2003年に「四季のごはん紘」をオープンしました。


築80余年の店舗は、元々貴宏さんの祖父母の家。「おばあちゃんの家に来たみたい」と、どこか懐かしい雰囲気も来店した皆さんに喜ばれています。




素材を生かした家庭料理に舌鼓
メニューは基本的に野菜を中心とした料理7品が並ぶ「昼のおまかせ膳」と、そこに肉や魚の料理などが1〜2品加わった「夜のおまかせ膳」の2つ。内容はその時にある野菜で決まります。

「乳製品を使わないグラタンなど定番の品もありますが、使用する野菜はカボチャや芋類、夏にはトマトなど、その日・その季節によって変わるんです」と紘子さん。見た目がエビフライのようなにんじんフライ、大豆を炊いてすりつぶし、里芋のような食感に仕立てた大豆ボール、本葛100%のごまどうふなどの個性豊かな品々に、多くのファンがついています。




食材はもちろん、塩や砂糖、醤油などの調味料まで厳選されたものを使っているので、健康的かつしっかりとした味わいを堪能できるのもうれしいポイント。「伝統的な製法で作られた調味料は、少量でもピタッと味が決まるんです。野菜もじっくり育ってたっぷりの栄養を蓄えたものなので、おなかいっぱいになりますよ」
自慢のお米を ごはんに、味噌に。
「四季のごはん紘」で提供するお米は、赤米、黒米、緑米の混植栽培。化学肥料や農薬、堆肥などを一切施さず、その年にその田んぼでできた藁を天日干しして田んぼに還元しています。




できたお米はそのまま炊くほか、麹屋さんに持ち込んで自家製味噌づくりにも生かします。「味噌は数個の大きな甕(かめ)に仕込んで、お客様に提供しています。仕込んだ時期によって味が違うので、お好きなものを選んでいただけますよ」と、丹精込めて育てられたお米をさまざまな形で味わえるのも魅力です。


自宅や職場でもお店の味を堪能!
お店でいただけるおまかせ膳と同じく野菜たっぷりのお弁当は、料金や内容の要望にも柔軟に応えています。鉢盛りやオードブル、年末にはおせち料理も。いろんなシーンで「四季のごはん紘」の味を楽しめます。


テイクアウトのほか、月に数回、不定期ですがお弁当配達も行っています。配達日と向かう方面はInstagramで情報発信され、2個から予約を受け付けています。配達を担うのは貴宏さん。なかなか家を空けられない人、足を運べない人、職場でも健康的なお弁当を食べたい人などのニーズにぴったりと合い好評です。
“自分の感覚”が身につく料理教室
お店のオープン当初から予約制で開催している料理教室では、これまで紘子さんが修業してきたノウハウを実習形式で伝えています。
元々レシピを細かく考えたり、たくさんの知識を学んだりするよりも、料理をつくることそのものに関心があった紘子さんは、「調理している鍋や野菜の様子を見れば、必要な調味料やその量は分かるようになります」と、レシピに分量は書いていません。あらかじめ決めた調味料や分量を入れていくより、味見をしながら順々に必要なものを判断して入れていく方が、野菜の旨味を最大限に引き出せるのだそうです。


「案内の際、料理教室でどんな実習をするのか、何を話すかなどは細かく説明していませんが、受講された後に『また来ます!』とよく言ってくださるんです。きっと、自分の感覚で調理する体験をしていただけたからだと思います。言葉では伝えにくいので、ぜひ一度体験していただきたいですね」と、教えることも好きな紘子さんは、多くの方の参加を待ち望んでいます。


各家庭での健康的な食生活も願って
最近では「野菜を食べに」と足を運ぶ方も増え、健康志向の高まりを感じているという岩石さんご夫妻。「最近は他所の農園で野菜の育て方のノウハウを学び、栄養の行き渡った大きな野菜をつくれるようになってきました。家庭菜園、アパートでもできるやり方があるので、そうしたこともお伝えしていきたいです」と、情報の共有を惜しみません。

二人三脚で歩むご夫妻は、これからもお店を通して野菜と料理の豊かな魅力を伝えていきます。