3代守り受け継ぐ嬉野茶
嬉野茶の産地である嬉野市内で、6.4ヘクタールという広大な茶畑を受け継ぐ3代目の峰伸一さんと妻の美紀さん。
茶畑には、やぶきた、さえみどり、おくゆたか、つゆひかり、きらり31など、味わいや個性が異なる6種類の茶の樹が大事に育てられています。
「嬉野茶ですから嬉野という土地で栽培することがこだわりですね」と微笑む伸一さん。1本の茶の樹から30〜40年収穫するため、土づくりに重きを置き、自然の素材をふんだんに配合したオリジナルブレンドの有機肥料を使用しています。さらに、海の恵みである「いりこ」を混ぜたことで、地域でも評判の旨味がたっぷりのお茶を生産しています。
温度や湿度、天候など自然の影響も大きく受けるため、日々夫婦で茶畑に足を運び、わずかな変化も見逃さず、話し合いながら最善の管理を行い、良質な茶葉を栽培しています。このような日々の積み重ねが評価されて、2018年には佐賀農業賞を受賞しました。
家族の協力で最高の茶葉に仕上げる
峰製茶園では、一番茶の摘採を行う5月頃に最盛期を迎えます。新芽を収穫するため早朝から畑に出かけ、3人の子供たちや両親も加わり家族総出で行います。
摘んだ瞬間から鮮度が落ちてしまうほどデリケートな茶葉。伸一さんは収穫したらすぐに機械を回し、荒茶に仕上げます。量が多いときには、24時間機械を回して加工に励みます。
リーフだからこその濃い味わい
「峰製茶園でお茶はじめ。」というコンセプトで、急須を使ってリーフ(茶葉)を淹れたお茶の美味しさを広めている峰製茶園。峰製茶園のお茶は若い芽をぜいたくに使っているのでまろやかな甘味や旨味がたっぷり詰まっています。こだわり抜いた極上のお茶だからこそ、特別な時に飲みたいもの。おしゃれなパッケージデザインにも心が躍ります。
デザインに込めた想い
嬉野茶の魅力をもっと知ってもらいたいと、ロゴやパッケージも一新しました。伸一さんは、「嬉野という文字が好きで調べていたら、【嬉】は【たのしみ】と読めることを知りました。私たちのお茶で、暮らしに”嬉しい(たのしい)”ひとときを届けたくて、こだわりのオリジナルブレンドには”嬉み(たのしみ)”と名付けました。お茶それぞれの特徴を深掘りして、漢字一字と“み”をセットにしています」と話します。
ロゴマークの「み」は峰さんの「み」なのはもちろん、人が手を繋いでいるイメージも込められています。デザインには70年以上続く峰製茶園の歴史や想い、そしていつも農作業をしている2人の姿や人と人との繋がりが表現されています。
味わいとともに広がるお茶の可能性
手軽に楽しめるようにとティーバッグの商品も充実。パッケージの裏面にはそれぞれのお茶の淹れ方が分かりやすく描かれており、急須で淹れたことがない人でも美味しい一杯が楽しめます。緑茶やほうじ茶、紅茶など9種類から選べるのもたのしみがあり、最近は自分へのご褒美やプレゼントにと購入される方も多いそうです。
緑茶はもちろん、珍しい「砂炒り」製法で焙煎し香ばしさが人気のほうじ茶「染み」(なじみ)や、希少品種のおくゆたかを使った甘味が特徴の紅茶「茜み」(あかみ)なども人気です。
発想豊かな美紀さんは「烏龍茶も作れるようになったので、大好きなジャスミンティーをうちの茶葉で作りたいんです。他にも、気分に合わせて選べるブレンドティーにも挑戦したいですね」と意欲を燃やしています。今後どんなお茶が誕生するのかたのしみです。
「チャノメ」で嬉野茶の魅力を広める
農業の経験がなかった美紀さんは嫁いですぐにお茶の淹れ方や作法を学んだそうです。「ペットボトルのお茶しか飲んだことがなかったので、リーフで淹れる美味しさを知れたのは特権ですね」と微笑みます。
もっと嬉野茶の魅力を広めたいと、5名の若手女性お茶農家グループ「チャノメ」のメンバーとして嬉野茶のPRや情報発信、さらには、女性でも農作業がしやすい作業靴の改良などにも取り組んでいます。
美味しいお茶を作り続ける
土壌管理から栽培、収穫、製造まで、お茶農家の一年は多忙を極めますが、美味しいお茶を作り続けるため、峰さん夫妻は妥協をしません。極上の一杯のために、今日も広い茶畑で汗を流す2人の姿があります。